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『心にナイフをしのばせて』 (奥野修司・著、文藝春秋)
当ブログ趣旨にそぐわない私事で恥ずかしいが、僕は学生時代、
試験前になると、なぜか無性に本が読みたくなる性分だった。
社会人になってからも、仕事が多忙を極め始める時期に限って、
本の虫に羽化していく習性が続いている。
慢性化した重症だ(同じような患者仲間は周囲に多々いるが)。

実は今も羽化の最中で、先週来、各紙の書評で評価されていた本書に、
灯りに集まる虫の如く飛びついてしまった。

表題にある「ナイフ」を「心にしのばせて」いる当事者は、
加害者と思いきや、被害者の妹だそうだ。
「歳月は遺族を癒さない」と記す筆者(大宅賞作家)が、
被害者の家族、中でも被害者の妹の独白を中心に、
「28年前の『酒鬼薔薇』事件」(帯ネーム)を振り返っている。

その事件は、神戸連続殺傷事件(1997年)と実行行為が酷似。
本書の少年A(当時15歳)は、あの少年Aと同じ関東医療少年院に収容された。
ここで読者は、「少年犯罪」の犯罪類型について、一つの平仄を見いだすだろう。

事件後、被害者の母は寝込み、父は洗礼を受け、妹はリスカ・・・。
長兄を失った家族の経緯は、語るにあまりあり、
家庭は崩壊した、と客観的に解釈される。

読者は、28年も前の悲惨な酒鬼薔薇的事件に驚愕しつつ、
未だ苦悶する被害者の口から出る言葉を、澱のように重く感じるだろう。
子供たちが被害者になる最近の事件に重ねて見てしまうからもしれない。

惨殺された場所は、「つつじが咲き乱れる畑の中だった」とある。
「少年法の理念」から更正したAは、後に弁護士になり、
Aの法律事務所の前には、同じようにつつじが「咲き誇っていた」。
もとより被害者の家族は「つつじを見ることが出来ない」でいる。

この二つ目の平仄を読者に投げかけた筆者。
僕は、氏のこの視点を評価したい。

だが、それに気付いて読み進まなければならない読者は苛まれる。
Aからは謝罪の言葉すらなく、損賠債務も滞ったまま。
被害者の家族は、加害者も社会復帰できないでいるであろうことを慮っていた。
自分が当事者であれば、生きていけない。

他方で筆者は、加害者の更正に関わる国費の高さに比べ、
被害者の救済に関わる国費の低さについても、問題提起している。
そんな多面な目配せ、我々は筆者の取材力に安堵する。

しかしながら一体全体、この事件をどう読めばいいのか。
加害者はガンクビをナイフで切断したのに、未だ反省すらないといい、
我々の生命・財産を守る法曹の立場で安穏としているという。

でも旧司試をクリアするぐらい更正したから、いいんじゃない?
・・・などという声が、どこからか聞こえてきそうで、背筋が寒くなる。

『心にナイフをしのばせて』 (奥野修司)
一人ごちに耐えられず、アマゾンごときに投稿してしまった。
◇答案の掲載方法について
◇・・・答案は文章形式にすると長くなり、また読みづらいと考えて、
 答練資料に見かける「答案構成」よりは長く、実際の答案よりは短く、
 しかも是々非々把握しやすいよう心がけてまとめていますが、
 どうも長い。

◇・・・そのために、以下のような記号を活用しています:
 ⇒ 問題提起
 → 順接
 ← 逆接、反論
 ∴ 結論、規範定立
 ∵ 理由、趣旨説明
 ≒ 言い換え、文言解釈
 ▼ 他説(あえて引用する場合のみ)

◇・・・商法の答案は、総則・商行為含め、すべてH17年改正に合わせ、
 条数など不都合ある場合は、答案中にその旨、記しています。
 公開会社以外については、特に聞かれていない限り、端折っています。
  H17年改正で問題が不成立になり、問題文のみ掲載した分は:
  ・H11−1(有限会社の社員総会との比較)
  ・H15−2(甲山一郎の名板貸責任)
  その他、H8−1(合併と分割と資本)も無理がありますが、答案入れてます。


◇・・・なお、筆者常用の基本書は:
 憲法(芦部/3版)、民法(内田/一部3版)、刑法(前田/3版)、
 商法(弥永/会社法9版)、民訴(書研本)、刑訴(池田・前田)
 ――ですが、大谷説や田宮説で書いている答案もあります。

◇・・・「問題文」下の「答案へ」からどうぞ。
 14年度以降は、法務省発表の「出題趣旨」を折り畳んでいます。

◇・・・機種依存文字が入っているかもしれません。

◇・・・問題文冒頭の★印は、個人的に思うところの良問、お気になさらず。